一時期,新しい収益モデルで注目されたPLoS Oneという雑誌があった。PLOSは,Public library of Scienceの略で,科学研究に誰でも無料でアクセスできるようにするという,崇高な理念のもとに組織されたプロジェクトである。
(おそらく)最も力を入れているのは,PLoS Biologyで,2015年現在,生物系の総合誌では,トップのIFを誇っている。PLoS Oneはその後発で,手法さえ正しければ掲載するという新しいコンセプトのもと刊行し,それが功を奏して一時期,隆盛していたが,Nature誌も同様のコンセプトでScientific Reportという雑誌を刊行して,最近は取って代わられた感があるが,ともあれ誰でも無料に〜という理念は素晴らしい。
科学論文をいざ読むとなると,それこそ,品質はピンからキリまであるので,それこそ,2ちゃんねるでウソをウソと見抜けるくらいのリテラシーが必要である。
いま,そういったリテラシーを備えた成人がどれくらいいるかはわからないが,例えば,これからの理科教育の目標を,「オープンソース化された科学情報を取捨選択できるくらいのリテラシー能力をつける」と置くとすると,科学技術先進国を目指す日本として,大学院生が備えるべき最低限のレベルとしてちょうどいいのではないかと思う。
量的だけでなく,質的な変化はかなり起こっている
ラボの予算や設備というのが,研究のクオリティに大変インパクトを持つ。それゆえ,少数精鋭でできること,知恵を使うことなど古典的な方法以外に,何かこの圧倒的不利を挽回できるようなゲームチェンジャーはないかとよく考えている。
研究を深める5つの問いという本では,研究における,「装置ありきのマインド」や研究費における「貧富の差」に問題を投げかけている。
IT,Fab,オープンソースは,明らかにそういった現状に一石を投じるものであると考える。たまたま,PLoS Biologyの記事 (http://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.1002086) で,3D printerを使ったラボ設備を特集していて,いまはここまで進んでいるのかと思った。
主に神経生理学周りの設備が特集されていて,私の関心と合致したので,興味深かった。
3D-printerで作るマイクロピペットやサーマルサイクラーなど。あと,オープンソースで2光子励起顕微鏡をオープンソースで作る論文が引用されており,引用元を見たが,やはり800万くらいはかかってしまうようである(とはいえ,販売価格の10分の1くらい)。